AR技術の知見・実績からシリコンスタジオを選定
東芝デジタルソリューションズは2018年5月、主に設備保全に関わる現場作業をAR(拡張現実)技術で支援する「MeisterAR Suite」を発売した。熟練作業者の高齢化・減少による人材不足と技術継承や業務効率化の難しさといった現場課題を解決するソリューションとして、製造業、エネルギー、社会インフラの工場・プラントなどに広く導入されている。
Meister AR Suite開発チームの東芝デジタルソリューションズ原田浩史氏はこう振り返る。
「Meister AR Suiteは、アプリ開発技術はもちろん、ARや画像認識といった専門知識のないユーザーでも、スライド作成ツールのような感覚でAR技術を駆使したデジタルコンテンツを作成できる製品です。しかし当初のバージョンは、コンテンツ作成用アプリケーションも閲覧用アプリケーションも同じプラットフォーム上で開発していたため、利用シーンや動作環境が異なるアプリケーションを作成したときに、どうしても使いにくい部分がありました。この課題を解決するために、コンテンツ作成用アプリケーションのプラットフォームを変更した新バージョンの開発を決めました」
ところが、東芝デジタルソリューションズの社内にはAR技術を使ったアプリケーション開発の知見や実績が十分ではなかったという。
「そこで新バージョンの開発にあたり、AR技術の豊富な知見を有する専門家に加わってもらおうと、開発パートナーを探すことにしました」
複数の開発ベンダーを候補に挙げ、AR技術を利用したアプリ開発の経験と技術力、さまざまなプラットフォームでの開発技術、ユーザビリティを追求したアプリの開発実績、そして東芝が求める開発・品質保証プロセスへの理解といった要件について比較検討した結果、選定されたのはシリコンスタジオだった。
「シリコンスタジオとは、3Dプリンターを活用した当社のネイルチップ(つけ爪)サービス『Open Nail』の3Dデータ加工ソフトウェアの開発を委託するなど、以前から取引関係にありました。また、グループ会社でAR技術調査業務を依頼した実績もあり、AR技術に対する知見を十分に備えていることは認識していました。さらに産業向けソリューションだけではなく、高いユーザビリティが要求されるコンシューマー向けゲームの開発実績もあること、オンラインゲーム事業者などに大規模ネットワークの設計・構築・運用サービスを提供していることも決め手となり、シリコンスタジオをパートナーに選定しました」