シリコンスタジオ、竹中工務店による月のシミュレーション環境開発をゲームエンジンで支援 人間のいない難環境で活動するAI・ロボット群の研究開発で活用
エンターテインメント業界を中心に、自動車、映像、建築など、さまざまな業界向けにデジタルコンテンツ関連ビジネスを展開するシリコンスタジオ株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:梶谷 眞一郎、東証グロース:証券コード3907、以下「当社」)は、株式会社竹中工務店(本社:大阪府大阪市、取締役社長:佐々木 正人、以下「竹中工務店」)が取り組む小型群ロボットシステムのための月のシミュレーション環境開発において、ゲームエンジンを活用したデジタルツイン技術の提供によって支援したことをお知らせします。


当社が竹中工務店からの委託により開発支援したシミュレーション環境は、ゲームエンジン※1「Unity(ユニティ)」による3Dデジタルツイン※2技術で構築した仮想空間です。AIを搭載した小型群ロボットによる月の溶岩チューブ内での探査と拠点建築の実現を目的として、シミュレーションで得られた情報をもとにロボットの研究を推進するために活用されています。
竹中工務店における月のシミュレーション環境の主な用途は以下の3つです。
1. ロボット単体および数百台の群ロボットとしての動きの検証
2. 群ロボットによる地図作成の仕組みの検証
3. 「ネットワーク知能」と呼ぶAIの学習データの取得および学習した結果の検証
当社が開発支援した月のシミュレーション環境は、UnityとROS※3を連携させることにより、複数の小型ロボット群が月でどのような動きをするか検証することができます。ROSによる操作内容を受信して、実物と同様の動きをUnity上で再現し、計算結果をROSメッセージとして送信するシステムです。月と同じ1/6Gの重力環境を再現し、同時に数十台単位のロボットを軽快に動かしてシミュレーションすることができるようになっています。これにより、AI学習のためのセンサー情報やカメラによる撮影データの取得、バッテリー充電システム、月の溶岩チューブ内における地図作成の仕組みなどを、実空間ではなく仮想空間で事前に検証することが可能です。
仮想空間内に再現した月の溶岩チューブは、竹中工務店が富士山麓にある溶岩チューブをスキャンして得られた3次元地形データ(点群※4およびメッシュデータ※5)を加工してUnityに組み込んでいます。小型ロボットおよびそれらの電⼒や通信を補う星型多面体のコンテナは、竹中工務店が設計したCADデータを3Dモデル化してUnityに取り込み、左右のタイヤの回転によって移動する動きやコンテナを押して回転させる動きを物理計算し、描画しています。

なお、このたびの月のシミュレーション環境の開発について、竹中工務店の髙井様より以下のコメントをいただいております。
人類未踏の月の溶岩チューブを探査するために、私たちは「ネットワーク知能」と呼ぶ革新的なシステムの研究開発を進めています。このシステムでは、群ロボットが人の直接的な制御なしに、自律的に組織を形成し、役割を分担しながら探査活動を行います。
今回開発したシミュレータを用いて、ロボットの物理的な動きだけでなく、ロボット同士の協調行動や意思決定プロセスといった社会的な活動を含めたデータの取得や再現を行います。これによって、「ネットワーク知能」の学習と検証を、より実践的な環境で行うことが可能となりました。
このシミュレータを活用することで、開発を加速させ、月面探査の実現を目指して研究開発を進めていきます。
株式会社竹中工務店 技術研究所 未来・先端研究部
主席研究員 髙井 勇志
※1 ゲームエンジン:コンピューターグラフィックスによるコンテンツ開発に必要なライブラリやツールなどの機能がまとまった統合開発環境
※2 3Dデジタルツイン:現実空間に実在している物体や環境に関する情報を収集し、仮想空間に3Dモデルで再現する技術
※3 ROS:ロボットアプリケーションを開発するためのオープンソースのフレームワークとツールセット
※4 点群:3Dレーザースキャナーなどで計測することにより得られる、無数の点の集合体として取得された座標情報(XYZ)と色情報(RGB)を持つ物体表面の形状情報
※5 メッシュデータ:地図上を格子状に区切った区画(メッシュ)単位で整備されたデータ
■事例インタビュー
株式会社竹中工務店 技術研究所
月の溶岩チューブで稼働する小型ロボット群のシミュレーション環境をゲームエンジンの活用によって開発
https://tech.siliconstudio.co.jp/case/takenaka_unityros_interview/
■シリコンスタジオ株式会社について
当社は、ゲームや映像制作スタジオ向けに加え、自動車、映像、建築など、さまざまな業界向けに3DCG技術等を提供する開発推進・支援事業と、クリエイター職の派遣・紹介に特化した人材事業の2つの事業を展開しております。企画、技術、人材、運営など、ゲーム企業が抱えるすべての課題をワンストップで解決できること、および、ゲーム業界で培った3DCG技術等を他業種にも展開できることが強みです。ポストエフェクトミドルウェア『YEBIS』、リアルタイムレンダリングエンジン『Mizuchi』、リアルタイムグローバルイルミネーション『Enlighten』といった、高度な技術をゲーム制作現場に提供するシリコンスタジオのミドルウェアは、これまでワールドワイドで数多くのAAAタイトルに採用されてきました。また、Unreal EngineやUnityなどのゲームエンジンを活用した非エンターテインメント領域における案件に対し、コンサルティングから企画、設計、開発、運用まで、ワンストップで対応できるスキルと体制を有しています。
https://www.siliconstudio.co.jp/

コンピューターグラフィックス(CG)は、無限の可能性を秘めています。
映像・エンターテインメント分野では表現の幅を拡げ、土木建築・自動車といった産業分野では、可視化やHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)などに活用されています。AI・ディープラーニングの分野においても、学習データとしての活用が進み、その成果が評価され始めています。また、5Gのような高速大容量で低遅延を実現するネットワーク環境やクラウドの活用は、ユーザーエクスペリエンス(UX)にさらなる変革をもたらすでしょう。
私たちシリコンスタジオは、自社開発による数々のミドルウェアを有し、CGの黎明期から今日に至るまでCG関連事業に取り組み、技術力、表現力、発想力の研鑽を積み重ねてきました。それら3つの力を高い次元で融合させ、CGが持つ可能性を最大限に発揮させられること、それが私たちの強みです。
Ideas × Art × Technology
私たちはCG業界をリードするソリューションプロバイダーとして、お客さまの課題解決はもちろん、付加価値のあるアウトプットの提供をお約束いたします。
※ 「Unity」は、米国およびその他の地域でのUnity Technologiesまたは関連会社の商標または登録商標です。
※ その他、記載されている名称は各社の商標または登録商標です。